2022.04.01(金)その他
赤水 尚史 新院長就任のご挨拶
赤水 尚史 新院長の目指す未来とは?
隈病院初の内科出身院長として就任
はじめに
2022年4月より、新院長に着任いたしました。これまで、外科出身の医師が院長を歴任してきた隈病院にとって、初めて内科出身の医師として、私が院長となるわけですが、これまで隈病院が積み重ね高めてきた医療を、これからは内科と外科の垣根なくさらに広い視点から磨き、患者さんに対して最良の選択を幅広く提供できる病院として発展していきたいと考えています。まずは、私の自己紹介と今後の抱負について述べさせていただきます。
甲状腺との出会い
父親が医者だったこともあり、漠然と医師になろうと医学部に進みました。当時はまだ、これという専門分野は考えていませんでした。
甲状腺との出会いは1980年、京都大学医学部を卒業後のことでした。京都大学元総長の井村裕夫先生が当時教授を務められていた第2内科に入局した私は、その中心となる内分泌領域を専攻しました。医学を探究していく中で、全身に関わる診療科に進みたいと思うようになっていった私にとって、特に“全身を診る”ことにフィットしていたのが甲状腺を含む内分泌領域でした。
その後、神戸市立中央市民病院(現・神戸市立医療センター中央市民病院)内科で臨床研修を行いますが、当時の部長である森徹先生が甲状腺を専門にされており、甲状腺診療についてさまざまなことを教えていただきました。そこから本格的に甲状腺内科医としての私のキャリアが始まります。以降、京都大学や倉敷中央病院、和歌山県立医科大学、米国国立衛生研究所(NIH)などの施設で長年にわたり甲状腺疾患の研究や診療に携わってきました。
神戸甲状腺研究会から生まれた隈病院との縁
私の恩師である森徹先生と、隈病院の院長だった隈寛二先生のお二人が立ち上げたのが、現在も続く神戸甲状腺研究会(本年2月で第115回を数えています)です。そこで初めて、寛二先生にお会いし、隈病院との縁が生まれました。
その後、2020年から隈病院に入職しましたが、そのきっかけは前院長で現名誉院長の宮内先生から直接お誘いをいただいたことです。お話をいただいたときは、これまでやってきた甲状腺に関する臨床や研究の経験を生かすことによって隈病院に貢献することが可能であり、学会や論文などの学術活動も継続できると考え、迷うことなく決断しました。
入職して感じたのは、隈病院は甲状腺専門病院として非常に診療の質が高く、診療からカルテ、動線までシステムがしっかりしており、まさに患者中心の医療が提供されていることでした。
新たな取り組みや研究
将来、甲状腺診療において新たに導入されたり発展する分野に対する検討をすでにスタートさせています。例えば遺伝学的検査です。5年先、10年先には、甲状腺においても必ず遺伝子を利用した診療が極めて重要となってくると考えられますので、それに対応できるように準備を進めていきます。もちろん、遺伝子に限らず新しい検査や治療に関しては積極的に導入し、甲状腺専門病院として、高いレベルを常に保っていくつもりです。
また、学会や大学との連携のもとAIを活用した診断システムの開発にも携わっています。これは、肝機能や腎機能といった一般的な健康診断のデータから、AIが甲状腺疾患を見つけてくれるというものです。その他にも、AIを活用しエコー画像から甲状腺微小がんを予測することのできるシステムや、採血スキルマッチングシステムなど、早期診断や医療安全を見つめた複数のAIプロジェクトにも参画しています。患者さんにとって有益なものは積極的に取り入れていくという隈病院の姿勢は、変わることなく受け継いでいきたいと考えています。
患者中心の総合的な医療を目指して
これまでの内科・外科・放射線科・精神科に加え、眼科にも注力し、より総合的なアプローチから患者さんに最適な医療を提供できるよう診療環境を強化することもひとつのテーマです。
隈病院のすばらしい特長として、甲状腺専門病院としてオンリーワンの存在であることが挙げられると思います。規模的なことではなく、ここだからできる、あるいはここでしかできない治療や検査を提供できるといった、コンセプトとしてのオンリーワンです。甲状腺疾患だったら隈病院に行けばいいという患者さんの安心感はもちろん、実際それに応えられる治療や診療ができる、そんな病院はあまりないと思います。日本にとどまらず、世界におけるオンリーワンを皆さんとともに目指していきたいと願っています。
赤水 尚史 PROFILE
京都大学医学部を卒業後、神戸市立中央市民病院で内分泌学を専攻し特に甲状腺分野におけるキャリアを開始。その後、京都大学大学院や米国国立衛生研究所 (NIH)留学中には、バセドウ病の病因・病態に関する研究を行い、TSH受容体の単離に成功するなど、功績を残した。また、これ以降も、倉敷中央病院、和歌山県立医 科大学などの施設で、内分泌医療の研究および診療に尽力。重篤な甲状腺機能亢進状態から起こる甲状腺クリーゼの診断・治療方針をまとめ、国際的なガイドライン作成にも携わった。これら、数多くの臨床・研究における功績が評価され、国内外の学会で、数々の栄誉ある賞を受賞。さらに、日本甲状腺学会理事長、日本内分泌学会代表理事、国際内分泌学会理事などを歴任し、国際的にも広く学会の発展に貢献した。隈病院では、2020年4月より副院長に就任し、後進の指導や新たな研究体制の構築を進めている。和歌山県立医科大学特別顧問・名誉教授も務める。休日はテニスをして過ごすことが多く、宮内名誉院長とはテニスを通した旧友でもある。