2020.04.16(木)学術活動
成人の甲状腺低リスク微小乳頭癌に対する積極的経過観察の適応と方法が日本内分泌外科学会のホームページに掲載
当院では1993年から成人の甲状腺低リスク微小乳頭癌に対して直ちに手術をするのではなく、慎重に経過を見てもし進行したら手術をする(積極的経過観察と言います)ことを患者さんに提案し、同意が得られた方にはこのような取扱い方をして来ました。当院の2年後、1995年から東京の癌研究会附属病院でも同様の取り組みが行われ、経過観察中に腫瘍が増大するのは10年で8%、リンパ節転移が出現するのは3.8%と低頻度であり、このような患者さんはその時点で手術を行えばその後の経過は順調であること、経過中に遠隔転移をきたした人や甲状腺癌のために亡くなった人はないこと、専門病院で慣れた甲状腺外科医が手術を行っても、手術群の方が経過観察群よりも声帯麻痺などの不都合事象の頻度が高いことが明らかになりました。このような成果が漸く学会でも認められるようになり、この度、日本内分泌外科学会のホームページに「成人の甲状腺低リスク微小乳頭癌に対する積極的経過観察の適応と方法:日本内分泌外科学会 甲状腺微小癌取扱い委員会による提言」(図1)が掲載されました。この委員会の委員長は癌研病院から日本医科大学内分泌外科の教授となった杉谷巌先生であり、副委員長を当院外科の伊藤康弘医師、顧問を当院院長宮内昭が務め(図2)、その他の委員11名の中に当院病理の廣川満良医師も含まれています。当院で永年取り組んできた、患者さんの為になる微小癌の取扱い方が学会でも認められるようになりました。
図1
図2