インタビュー

診療の腕を磨き、患者さんの生活に寄り添った治療を行いたい

教授の後押しを得て、さらに専門性を磨く道へ

私は兵庫医科大学 医学部を卒業後、そのまま同大学で研修を受け、3年目に糖尿病・内分泌・代謝内科に入局しました。入局後、主に内分泌疾患の診療にあたるなかで、より専門性を身につけたいと思うようになり、甲状腺疾患に興味を持つようになりました。そして徐々に、甲状腺診療を究める先生方の下で専門性をより磨きたい、外来診療にもっと深く携わりたいという思いが強くなっていったのです。
甲状腺診療の研鑽を積む場所を考えたときに真っ先に浮かんだのが、隈病院でした。所属していた兵庫医科大学は副腎疾患をメインに診療していたこともあり、甲状腺疾患の患者さんの場合は、隈病院にご紹介することが多くありました。そのため、“甲状腺疾患を専門的に診る病院といえば隈病院”というイメージをもともと持っていたのです。また、外来診療が好きな私にとって、多数の甲状腺診療に携われる点も魅力的に感じました。そこで教授に相談したところ、快く応援してくださったことも後押しとなり、隈病院への入職が決まりました。

フレンドリーな先生方に囲まれ、ガラリと変わった隈病院へのイメージ

入職前から隈病院の先生方のお名前は、診療ガイドラインや教科書で拝見していました。そのため“きっと長年にわたって甲状腺の分野を突き詰めてこられた、厳格な先生方が多いのだろう”と勝手に想像していました。しかし、実際に入職してみると予想に反してフレンドリーな先生方ばかりで驚きました。世界的に活躍されていらっしゃることをつい忘れてしまうほど距離が近く、優しく接してくださり、イメージがガラリと変わったのです。
とはいえ、どの先生方も“甲状腺の分野が好き”という気持ちを原動力として研究や診療を突き詰めておられるところは、当初のイメージどおりだと感じています。

患者さんファーストのやさしい診療を実現する“垣根の低さ”

外来で患者さんとやりとりをするなかで、時には対象の病気を専門としている先輩医師に意見を伺ったりお知恵を拝借したりすることがあります。何十年も突き詰めて甲状腺疾患に向き合っている先生方だからこそ、それぞれの患者さんに伺うべき点や分かりやすい伝え方などを的確にアドバイスしてくださり、日々のよりよい診療につながっていることを実感します。
また、外科的な内容や検査の詳細については他科の先生方や検査技師さんに相談することもあるのですが、皆さんいつでも快く相談に乗ってくださるので大変心強いです。一緒に患者さんへ説明してくださったり、似た症例のカルテを基に詳しく教えてくださったりする先生方もいらっしゃいます。診療科や職種を越えて、こんなにも皆が一丸となって甲状腺疾患に向き合う環境はなかなかないと感じています。
加えて、当院では症例に関するカンファレンスや学会発表の内容も診療科を越えて全体で共有されます。このように新しい研究などのキャッチアップがしやすいことも、隈病院の魅力の1つだと思います。

甲状腺診療への思い――女性としての視点も生かして患者さんに寄り添う

個々の患者さんの生活に合わせた治療を提供する喜び

甲状腺疾患は、それぞれの患者さんの生活に即して治療できる点が魅力だと思います。この点に惹かれ、私は甲状腺内科医を目指すようになりました。実は医師を目指した当初は、緩和ケア医を志していましたが、その理由も、症状や患者さんの生活に即した治療ができる点に惹かれていたからです。
免疫の異常によって引き起こされる甲状腺疾患は、甲状腺ホルモンの産生に支障をきたし、1つの臓器だけではなく全身に症状が及びます。また病気による症状を「なんとなくつらい」といった不定愁訴で済まされてしまうことが多く、診断がつくまで苦労される患者さんも少なくありません。
実際に外来で診療をしていると、つらそうにしていた患者さんが、診断がついて治療を開始すると数値も症状も徐々に改善し、いきいきとしてくる瞬間に立ち会うことがあります。このような患者さんの姿を目の当たりにすると、医師としてやりがいを感じますし、よりいっそう専門性を高めて患者さんに寄り添った診療をしようという気持ちになります。

医師として、同性として患者さんを支えたい

外来診療が好きな私にとって、1対1で患者さんとさまざまな話ができることは楽しみの1つであり、やりがいにつながっています。甲状腺疾患は若い女性の患者さんが多く、妊娠・出産にも関わりが深い病気です。患者さんの中には「ちょっと男性医師には聞けなかったんだけど、これはどういうことでしょうか」などと、女性ならではの困りごとや疑問について相談してくださる方もいらっしゃいます。女性医師だからこそ話しやすいこともあるかもしれませんので、困ったことがあればぜひ頼ってほしいと思います。
また女性の患者さんの中には、治療を経て無事に出産され、生まれた赤ちゃんを連れてきてくださったり、赤ちゃんの写真を見せてくださったりする方もいらっしゃいます。そのような報告をいただけることもとてもうれしく、もっと頑張ろうという気持ちが湧いてきます。

憧れは同じ内科の久門 真子先生

同じ医師として、特に同科の久門 真子(ひさかど まこ)先生は私の憧れの存在です。患者さんの視点に立った分かりやすい説明や、患者さんの話によく耳を傾けて診療にあたっておられる姿は医師として尊敬の一言に尽きます。
また女性医師として仕事と家庭を両立しながら活躍されている点や、相談に乗ってくださるときにいつも何気ない気遣いの言葉をかけてくださる点にも憧れており、背中を追う存在です。

先生方の指導を糧に学びを追求していきたい

甲状腺は知れば知るほど奥の深い分野ですので、これからも先輩医師たちに倣って研鑽を積んでいきたいと思っています。兵庫医科大学では遺伝子に関わる機会も多く、また遺伝の分野を専門とする先生方の研究を身近で拝見する機会も多かったため、これからは遺伝関連の分野でもさらに学びを深めていけたらと考えています。
また、研究の面では検査値に異常が起こる非特異反応について西原 永潤(にしはら えいじゅん)先生や検査技師の方にご指導いただきながら、学会発表や論文執筆を現在進めており、いずれはこの分野を究めることができればと思っています。西原先生には論文の改善点なども丁寧に分かりやすくご指導いただいています。この恵まれた環境を生かして貪欲に学び、尊敬する先生方のように甲状腺を突き詰めていきたいです。

このインタビューのドクター

兵庫医科大学医学部を卒業後、同大学での初期研修を修了。症状や患者さんの生活に即した治療ができる甲状腺診療に惹かれ、糖尿病・内分泌・代謝内科に入局。より甲状腺診療を究めるべく、2023年に隈病院に入職。女性医師として患者さんを支えることができる存在を目指し、患者さんに寄り添った診療を行う傍ら、非特異反応の研究にも携わり臨床と研究に力を尽くす。

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