インタビュー

尽きない学びを追求できる喜び——憧れの隈病院で診療に真摯に向き合う

医師10年目で念願の隈病院へ

私は2014年に自治医科大学を卒業しました。同大学には義務年限制度が設けられており、在学期間の1.5倍の期間、出身都道府県に戻り知事の指定するへき地等の公的医療機関にて勤務すれば授業料等の費用が免除されます。私はこの制度の下、卒業後9年間は地元富山県で地域医療に従事しました。その間、市中病院の総合診療、救急医療(ドクターヘリ、外来初療、集中治療)、特別豪雪地帯でもある山間部の診療所勤務に携わりました。そして、義務年限が終了しました2023年に、念願の隈病院への入職を果たしました。

甲状腺疾患診療の奥深さに魅了され、たどり着いた隈病院

甲状腺内科医を目指そうと思いましたきっかけは、医学生の時に遡ります。大学で甲状腺の講義を受けて、「これは面白い」と思いました。初期臨床研修時は総合診療医として勤務していくことも考えましたが、自身の興味のあることを一生の仕事にしたいとの強い思いから、甲状腺内科医を目指すことを決意しました。
富山県での地域医療の中でひたすら甲状腺疾患の症例を多く拾い上げては学会発表を行いました結果、日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医(以下、甲状腺専門医)を取得しました。総合診療、救急医療にあたりながら甲状腺専門医の資格を取得するのは簡単なことではありませんでしたが、将来は甲状腺診療の道に進みたいとの思いと、純粋に甲状腺が好きという思いが原動力となりました。総合診療、救急医療に携わりながらも自然と甲状腺疾患の疑いがある症状、所見に目がいきますし、症状のある患者さんはぜひ自分に診療させてほしいという思いで担当させていただく日々でした。
甲状腺疾患は、概念自体はシンプルながらも、診療においては奥深さがあるところが魅力だと思います。診断・治療を提供する場面では難しさを感じることもあり、勉強を重ねていっても学びが尽きません。この二面性ともいえる特徴が面白く、ますますのめり込むようになりました。
そうして甲状腺に関する書籍や文献を読み込む日々の中で、徐々に隈病院が発信する情報に魅力を感じていることに気が付いたのです。思い返してみますと医学生時代に好んで読んでいた書籍も隈病院の先生が執筆されたものでした。その後2017年に初めて日本甲状腺学会学術集会に参加した際、甲状腺分野における隈病院の存在の大きさを肌で感じ、同年に見学に行きました。そして大学の医局には所属せず、唯一見学に行きました隈病院への入職を希望しました。希望がかない入職が決まった時には、義務年限を過ごしました地元を離れることに寂しさを感じつつも、とてもうれしかったことを覚えています。

学会発表のようなカンファレンスが日常

隈病院はハイレベルな診療を行っている病院という印象を入職前から持っており、入職後もその印象が変わることはありませんでした。まるで学会発表のようなカンファレンスが日常となっているところに、隈病院のすごさを感じています。カンファレンスは先生方から興味深いさまざまな意見をいただける貴重な場であり、自分が出す症例に関しては事前にしっかりと復習し、多角的に考察しながら述べるようにしています。それでも自分では気付いていなかった点を指摘していただけるので、やはり勉強になりますし、最終的に患者さんの役に立っていると感じます。私が気付かなかった納得の意見を出してくださるので、毎日のカンファレンスが本当に楽しみです。
甲状腺内科医としての働きやすさの面でも、隈病院は素晴らしいと感じています。外来診療がスマートかつスムーズに進む体制が整っているため、医師は集中して診療に取り組むことができるのです。また、外来中に治療方針に悩んだ場合でも先生方にさっと質問し、適切な回答をいただくことができます。内科、外科、病理などの診療科の垣根がなく、質問しやすい環境です。
院内の雰囲気もよく、甲状腺が好きな方であればとても楽しく仕事ができると思います。私は入職して1年ほどたちますが、自分でも診療に深みが出ている実感がありますし、治療の選択肢のレパートリーが増えたと感じています。

深田 修司先生を目標に、真摯に診療に取り組みたい

隈病院に入職前は、勤務終了後に甲状腺の自習に取り組む毎日でした。中でも深田 修司(ふかた しゅうじ)先生が執筆された『135の症例でわかる甲状腺疾患の診断と治療』が愛読書でした。甲状腺疾患の症例集であり、1例目の亜急性甲状腺炎の内容から感銘を受けたことを今でもはっきりと覚えています。教科書的な内容ではなく、深田先生が実際に迷った部分や、どうすればよいのか分からなかったことまで書かれているのです。読んでいると自分も一緒に診察室の中にいるように感じ、本当に勉強になりました。入職後、診療に真摯に向き合う姿勢を継続していらっしゃる深田先生の姿を目の当たりにし、さらに尊敬の念を深め、甲状腺疾患に取り組む医師としての私の目標となりました。
深田先生の本で勉強していたおかげで、入職前と入職後の仕事内容にギャップを感じることはありませんでした。また、富山県で1例1例に時間をかけて深く診療してきたことが今に生きていると感じています。症例数が増えても深く診療する型を身につけることができましたので、今、適切な診療が行えているのだと感じます。その結果として、患者さんの症状が改善し、楽になられた様子をみるのは大変うれしく、日々臨床を行うモチベーションにつながっています。これまで重ねてきた経験を生かしつつ、毎日大勢の外来患者さんを診療できるのは本当に楽しく、やりがいを感じる日々です。
また、入職後は先輩の医師たちからたくさんの指導を受けることができています。中でも特に印象的だったのは“診療中気になった点や疑問に思った点は、考える手間を惜しまずに突き詰める”という教えです。たとえ現時点では明確に解決できない点であったとしても、深く掘り下げる姿勢で取り組んでいきたいです。

診療、学会発表などで隈病院に貢献したい

現在私は、宮内 昭(みやうち あきら)名誉院長、西川 光重(にしかわ みつしげ )学術顧問、伊藤 充(いとう みつる)内科 科長の指導の下、甲状腺微小乳頭がん(微小がん)に対するTSH(甲状腺刺激ホルモン)軽度低値管理中の甲状腺ホルモンバランスに関する研究に取り組んでいます。これは、微小がんの積極的経過観察中に、腫瘍(しゅよう)増大を抑える目的でTSHを軽度低値にするために合成 T4 製剤を内服した患者さんは、甲状腺中毒症の症状や徴候は示さなかったという宮内 昭名誉院長らの実臨床が契機となっている研究です。
今後も隈病院の医師として研鑽を積みつつ、診療、学会発表、論文執筆、日本甲状腺学会の臨床重要課題の委員会活動を通し、甲状腺疾患診療の分野に貢献していきたいと思っています。

このインタビューのドクター

自治医科大学を卒業後、同大学の義務年限制度の下、9年間富山県で地域医療に従事。市中病院の総合診療、救急医療(ドクターヘリ、外来初療、集中治療)、山間部の診療所勤務に携わりながら、日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医の資格を取得する。2023年に隈病院に入職。甲状腺が好きという思いを原動力に、診療、学会発表、論文執筆、日本甲状腺学会の臨床重要課題の委員会活動などに取り組む。

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