2024.11.15

甲状腺眼症(バセドウ病眼症) (こうじょうせんがんしょう(ばせどうびょうがんしょう))

  • バセドウ病
  • 甲状腺の病気の症状
  • 甲状腺ホルモン
  • 目の症状

病気の特徴

バセドウ病(まれに橋本病)の患者様に、「目が出る(眼球突出)」「まぶたが腫れる」といった症状が出ることがあります。全員に目の異常が出るわけではなく、ごく軽いものまで含めると30%くらいの方に眼症の症状が出ると言われています。

症状が悪化する活動期が数か月間続いた後、あまり変化がなくなる非活動期に進みます。非活動期になると外科的治療が必要になることがあるため、できるだけ早い時期に診断・治療を受けることが大切です。バセドウ病の適切な治療に加え、目に対しては別の治療が必要になることが多いです。検査や治療には、眼科医と甲状腺専門医が協力して行います。
 

 

喫煙は目の症状を悪化させます。喫煙されている方は、すぐに禁煙してください

原因

バセドウ病の原因と同じく、自己免疫の異常が原因と考えられています。まぶたや眼球の後ろの組織に炎症が起こります。炎症が起きた部分がむくんで腫れたり、炎症が落ち着いたあとも脂肪組織が増えたりするために、さまざまな症状が現れます。

症状

顔つきの変化(まぶたの腫れ、まぶたがつりあがる、眼球突出)、結膜(白目の部分)の充血、目の痛み、物が二重に見える、目がころころする、まぶしい、視力低下、物がゆがんで見える、視野全体に色が付いて見える、などの症状が見られます。特に視力低下、ゆがんで見える、色が変わって見える症状は、視神経が圧迫されることによっておこる症状ですので、治療を急ぐ必要があります。

目の症状と甲状腺のホルモンの異常は、多くが同じ時期に出現します。しかし、目の症状だけが先に出ることや、逆にバセドウ病などの治療中に、遅れて目の症状が出ることもあります。

診断と検査

まずはじめに、甲状腺の病気の検査(血液検査、超音波検査)などを行います。甲状腺刺激ホルモン受容体抗体(TRAb・TSAb)は原因の一つと考えられており、目の症状の経過を反映しやすいと言われています。目が出ているかどうかは、専用の器具による診察や、CT検査で判断します。目の炎症の程度を判断するために、問診のほか、MRI検査を行うことがあります。

治療

血液中の甲状腺ホルモン値を正常化させることが必要です。メルカゾールなどの抗甲状腺薬を しっかり内服してください。

炎症が強い時期(活動期)と、炎症が落ち着いた時期(非活動期)では、治療が異なります。

【活動期の治療】

●1 局所治療  
比較的症状が軽い場合は、炎症のあるまぶたなどに、副腎皮質ホルモン(ステロイド)薬の注射を行います。ステロイドには炎症を抑える効果があります。

●2 ステロイドパルス療法  
中等症から重症の場合に行います。ステロイドを点滴で注射します。入院して行う方法と、外来で行う方法があります。

●3 放射線療法
ステロイドパルス療法と同時に行うことが多い治療です。目の奥の組織に放射線をあてて、炎症が再び起こらないようにします。設備の整った放射線科がある医療機関に通院する必要があります。

【非活動期の治療】

●1 ボツリヌス毒素の局所注射
炎症が治まっている状態で、目の見開きに左右差がある場合には、ボツリヌス毒素の局所注射を行うことがあります。

●2 外科的手術
腫れているまぶたの脂肪を切除する手術、眼球を引っ込める手術(眼窩減圧術)、眼球運動障害による斜視に対する手術などがあります。

【新しい薬剤による治療】

●テプロツムマブ(テッペーザ® )
成長因子の一つである、IGF-1の働きを抑えるお薬です。IGF-1は動物の成長や発達を促す因子ですが、甲状腺眼症の発症に関係しているとされています。
眼球突出を含む、目の様々な症状の改善が期待できます。外来で3週間ごとに点滴で治療を行います。

 

目の症状は徐々に良くなる方もいれば、目立った変化のない方もいます。急に治らないからといって悲観する必要はありません。時間はかかるかもしれませんが落ち着いてくることが多いので、あせらないことが肝心です。

関連記事