橋本病と妊娠 (はしもとびょうとにんしん)
橋本病と妊娠の関係
甲状腺機能低下症は、不妊や流産、早産、妊娠高血圧症候群などのリスクになりますので、橋本病で甲状腺機能低下症を発症した患者さんでは、妊娠を希望する場合は妊娠前から甲状腺機能を正常に保つことが重要です。妊娠すると甲状腺ホルモンの必要量が増えますので、妊娠を契機として甲状腺ホルモン製剤を開始する必要がでてくることがあります。妊娠前から甲状腺ホルモン製剤を服用していた人では妊娠後に増量を要することがあります。妊娠中は甲状腺機能の確認と甲状腺ホルモン製剤の用量調整のため、病態に応じて頻回に通院を要します。分娩後は甲状腺ホルモンの必要量は妊娠前の状態に戻りますので、妊娠中に増量していた甲状腺ホルモン製剤を減量または中止することが多いです。橋本病と子どもに対する影響
橋本病の子どもへの遺伝を気にされる方がいるかもしれませんが、橋本病の発症には遺伝的素因だけではなく、環境因子、内因性因子が関与するとされています。甲状腺自己抗体が陽性となるには遺伝的素因が大きいとされており、家族内で自己抗体陽性者を複数人認めることもよくあります。環境因子にはヨウ素摂取量や服用している薬剤、ウイルス感染の影響などがあります。内因性因子としては性別が女性であることや出産等が挙げられます。橋本病の家族歴のある女性では、過度に心配する必要はないものの、甲状腺機能低下症の症状がある際や妊娠した際は、適切な検査を受けることをおすすめします。
橋本病と不妊症の関係
不妊女性では甲状腺機能異常を有する人が多いことが知られています。また、日常生活には差し支えない程度のごく軽度の潜在性甲状腺機能低下症でも、流産率が上昇する可能性が報告されています。不妊症の検査で甲状腺機能異常を指摘された場合は、異常の程度や不妊治療の経過にもよりますが甲状腺機能の治療が検討されます。関連記事