甲状腺がんが再発・転移した場合は? (こうじょうせんがんがさいはつ・てんいしたばあいは?)
甲状腺がんが再発・転移した場合は?
がん(悪性腫瘍)の一般的な特徴の一つに元々の臓器とは別の臓器に飛ぶという性質があります。これを転移といいます。これは良性腫瘍にはない性質で、甲状腺がんも例外ではありません。リンパ節転移と遠隔転移
転移にはリンパ管を通って甲状腺の周囲のリンパ節へ転移するリンパ節転移と、血管を通って甲状腺とは離れた遠くの臓器に転移する遠隔転移があります。リンパ節転移
甲状腺のがんが最も転移する場所は甲状腺周囲のリンパ節です。甲状腺がんの手術の際に周囲のリンパ節も一緒にとるのは、リンパ節にがんが転移しやすいためです。遠隔転移
遠隔転移をする部位はがんによってしやすい場所が決まっています。甲状腺のがんの場合、肺、肝臓、骨、脳への転移がほとんどです。がん細胞の発生と転移
がん本体も転移も、もともとは一個の細胞から発生します。しかし現在の医学では少なくとも数mmの大きさのがんでないと発見することはできません。細胞の数でいうとこれは数十万から数百万個のがん細胞の塊になります。転移というのはこの細胞一個一個が飛び、リンパ節や肺、骨などに根付いてそこで増えるという現象です。転移発見(再発)までのタイムラグ
手術をして甲状腺のがんを全部取ったはずなのにどうして後から転移が出てくる(再発)ことがあるのでしょうか。手術でがんを取ってしまえば、それ以後にそこからがんが転移することはありえません。ということは手術後にリンパ節や肺や骨に出てきた転移は手術する前にすでに飛んでいたがんであり、これが徐々に大きくなって、転移していたことがあとでわかるということです。甲状腺のがんの増大速度
甲状腺乳頭がんや濾胞がんといった一般的な甲状腺のがんは、ほかのがんと比べるとゆっくりと大きくなります。ここから逆算すると転移してから発見されるまでのタイムラグが非常に大きいということです。転移したがん細胞が長い時間をかけてかなり増えた段階ではじめて発見されるわけです。「がんの手術後5年間再発しなければ大丈夫」という話を聞かれたことがあると思いますが、これは胃がんや肺がんなどは甲状腺のがんより増えるスピードがはるかに速いため、手術の直前にがん細胞が転移していたとしても5年もすれば再発を発見できる大きさにまで育つので5年以内に再発が見つからなければそれ以後出てくることはないだろうという意味です。
しかし、甲状腺のがんの場合、術後15年、20年たってから再発してくる例は珍しくありません。これは、それだけ甲状腺のがんが増えるスピードが遅いということです。
手術の後も長い間再発を気にしなければならないのは良くない点ですが、発見してからも大きくなるスピードが遅いので命に関わるようになるのも時間がかかります。この点で甲状腺のがんはおとなしいがんと言われています。
転移の治療
リンパ節転移に対しては手術や放射線治療を、遠隔転移に対しては放射線アイソトープ治療や分子標的薬治療などが行われますが、命にすぐに関わるためすぐに全力で治療するほかのがんとは異なり、経過を見ることも含め、どのタイミングでどういう治療を選択していくのが最も有利であるかを見極めることも甲状腺のがんのようなおとなしいがんの治療には必要です。甲状腺微小がんは経過観察を推奨
隈病院では、低リスクの甲状腺微小がんは手術よりも『経過観察』を推奨しています。この取り組みが世界的にも注目されています。
詳しくは、こちらのコンテンツをご参照下さい。
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