サイログロブリン Thyroglobulin (さいろぐろぶりん)
サイログロブリンとは
血中に分泌される甲状腺ホルモン(T4=サイロキシン)の直前の物質のことです。甲状腺組織の中で合成され大量に貯蔵されています。
正常の状態では血液中にはわずかにしか出てきません。
甲状腺に病気が出現した時に血液のサイログロブリン値が高い値を示します。
その値は血液中の濃度で表現されます(正常値46ng/ml以下)。
サイログロブリンは甲状腺の血液検査でしばしば測定されるもので、Tgと記されています。
血中サイログロブリン値は、
甲状腺の腫瘍がサイログロブリンを産生する時
甲状腺を刺激する物質で甲状腺が刺激された時
甲状腺の炎症で甲状腺組織が破壊された時
に高い値を示します。甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんなどの甲状腺の腫瘍マーカーとして使用されることがありますが、良性の甲状腺腫瘍、やバセドウ病、慢性甲状腺炎などでも値が高くなり、必ずしもがんの存在を示すものではありません。
甲状腺乳頭がんや甲状腺濾胞がんになった方は、甲状腺全摘術の後に腫瘍マーカーとしてサイログロブリンの測定を行います。もし低下していた血中サイログロブリン値が高くなった時は、頸部のリンパ節の再発、遠隔臓器への転移、たとえば肺転移や骨転移などが考えられます。
サイログロブリンの値が高いだけでは、甲状腺がんの確定診断はできません。血液のサイログロブリン値では甲状腺腫瘍の良性悪性の鑑別は不可能です。良性悪性の鑑別には超音波検査、細胞診などを行います。
サイログロブリンの特殊な使い方
・大きく腫れた頸部のリンパ節が、甲状腺がん由来であるのかを診断します。注射針でそのリンパ節の組織を採取し、食塩水で稀釈してサイログロブリンの値を測定します。サイログロブリン値が高い時は甲状腺がん由来と診断できます。・甲状腺から遠く離れた組織(たとえば肋骨や腰の骨)が腫大した時、甲状腺がん由来のものかどうかを診断します。その組織の中にサイログロブリンが存在するかをプレパラートの上で染色し、顕微鏡で観察して、サイログロブリンが陽性であれば甲状腺がんの転移と診断されます。