急性化膿性甲状腺炎 (きゅうせいかのうせいこうじょうせんえん)
病気の特徴
急性化膿性甲状腺炎は細菌感染による甲状腺やその周囲の急性炎症です。甲状腺の部分が腫れ、痛みがひどく、発熱があり、食事をとったり唾を飲みこむと痛みが増強します。12歳以下の小児に多く、なぜか90%以上が左側に起こります。抗生物質の投与や切開して膿を出せば普通は容易に炎症が治まりますが、感冒や扁桃腺炎などに引き続いて炎症が再発することが少なくありません。原因
このような炎症がなぜ起こるのか長らく不思議なこととされていましたが、世界で初めて私たちが「この病気を起こした患者様には、
下咽頭から甲状腺に向かって走る生まれつきの細い管(瘻孔[ろうこう])があること、
この管を通じで咽頭からもたらされた細菌感染が甲状腺やその周囲に広がること、
この瘻孔を摘出すれば炎症が再発することはないこと」を明らかにしました。
普通の方にはないこの細い管を、下咽頭梨状窩瘻[かいんとうりじょうかろう]と名付けました。一種の発生異常です。
診断
バリウムを飲み咽頭食道透視のレントゲン検査などで瘻孔を確認します。治療
一般には瘻孔を手術で摘出します。ただし、炎症の後ですので、反回神経などを傷つけないように瘻孔をきちんと摘出するのはかなりの手術経験が必要です。反回神経を傷つけると声がかすれ、瘻孔が完全に摘出できないと炎症が再発を繰り返します。当院では2006年より日本で初めて喉頭鏡下で瘻孔を閉鎖する治療(下咽頭梨状窩瘻化学焼灼療法)を行っています。従来の手術療法と比較して、反回神経を傷つける可能性が非常に低く、術後の痛みが少ない治療法です。